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突入せよ!『あさま山荘』事件
公開日 2002年5月11日 評価
配給会社 東映
監督・脚本 原田眞人 上映時間 133分
原作 佐々淳行 製作国 日本

配役 佐々淳行 宇田川真一 野間本部長 丸山参事官 後藤田長官 佐々幸子
出演 役所広司 宇崎竜童 伊武雅刀 串田和美 藤田まこと 天海裕希

[内容]
1972年。連合赤軍メンバーが軽井沢の「あさま山荘」に管理人の妻を人質にろう城した。
迅速に事件を解決するべく警察庁からやってきた監察官の佐々淳行。しかし、現場の指揮権をめぐり、メンツを気にする長野県警との足並みは揃っていなかった。
そして、多々の問題を抱えたまま遂に機動隊による突入が強行されるのだが…

[感想]
原作は読んでいませんが予想外に面白かったです。
私はこの事件についての詳細を知らなかったのですが、この映画を観てなんとなく分かりました。警察の視点から事件を追う形で物語は進行していきますが、歴史に残る大事件を上手く映画化していたと思います。

氷点下の山奥で人質解放のため闘った男達の信念。そこで繰り広げられる数々の人間ドラマを、臨場感溢れる演出と共に上手く表現しています。ほとんどの時間を警察庁と県警とのいがみ合いの描写に費やしているのですが、この辺りの警察を美化していないところは共感できました。まさに、メンツに縛られる組織の裏側を浮き彫りにする映像でした。

しかし、この作品内で犯人側の精細な描写はほとんどありません。一般的な作品では犯人側が犯行に及んだ動機や背景から描くのが普通だと思いますが、敢えてこういった過程を省き敵の状況が全く不明なブラックボックスの部分を設けたことより、一層恐怖を掻き立てられました。まあ、偶然なのかどうか詳しい理由は分かりませんが…。

警察の強行突入時の圧倒される迫力。そして最後の感動的な結末へと収束する爽快感。
実際にはもっとドロドロとした事件なんでしょうが、ユーモアを織り込んで映画化することによって娯楽作品としても十分楽しめる物に転換されています。
極限の緊張状態におかれた人間は、心理的に予測できない行動を起こすことも十分有り得るものだと思います。そうした弱さをリアルに表現している点も、この作品の良いところでしょう。

人質の生死が最優先、犯人は生け捕りが基本、更に警察側の銃器使用時の制約等、警察に不利な構造が生んだ多くの犠牲者達。この映画には警察組織の弱さに釘をさす、製作者側の痛烈なメッセージが込められているように感じました。
あと、主役の役所広司さんの渋い演技もいい味出してましたね。

+++update:2002/06/03+++