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白夜行                                    ☆評価
[著者] 東野 圭吾
[出版] 集英社
[内容]

建設中のビル内で質屋の店主が惨殺死体で見つかった。しかし、捜査は迷宮入りへ。
そんな中、一人のベテラン刑事が立ち上がる。執念で犯人を追い詰められるか・・・
共存する魂達が巧妙に仕組んだトリックの真相とは・・・
偽りの昼に太陽はない。さすらう魂の大叙事詩。

[感想]
本格的なミステリーとして十分に楽しめました。これほで、精巧に作り上げられた
作品は、久しぶりのような気がします。まず、読んでいて飽きることもなかったです。
又、文章が巧みで読みやすかった点もスラスラ読めて良かったです。

ある質屋で起きた事件をきっかけに、めまぐるしく事件が展開していきます。
鋭い眼光で昔のある事件を信念で追い続ける刑事、抜群の冴えを見せる探偵、
入念な計略の罠に落ちる有名企業の御曹司達、孤独な少年、裏の仮面を持つ女等
登場人物が豊富で個性豊かなので面白かったです。

ストーリーが約20年間に渡ってスリリングに展開していき、その中での事件への
伏線の散りばめ方も絶妙で、後半の真相究明部分に引き込まれていきます。
又、クレジットカード偽造やゲームソフト違法コピー等、感心させられる技術情報が
巧みに盛り込まれている点も興味深かったです。

幼少期の傷が原因で、多数の人々の人生に影響を及ぼしてしまう、パターンは
良く使われる手法ですが、イベントをバランスよく散りばめている点は上手です。
直接関係する二人の心の内側を描写せずに、ブラックボックスになっている点が、
この物語の怖さでもあるのですが、内容のわかりにくさにも繋がっています。
この、第三者により心の中を解明していく手法は、精密に計算されていて凄いです。

感情移入できる主人公が固定されいない点や、最後の真相が不透明なところは、
スッキリしない原因かなと思います。この点は残念ですね。
正義が勝ち悪は滅びると言う常勝パターンが崩れてしまうのは、ある意味、爽快感
に欠ける気がしました。十分に面白い作品なだけに、最後の詰めをもう少し考えて
欲しかった気もしますが、まあ、それは贅沢かな・・・

 +++update:2001/12/21+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++