群青の空を越えて

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ブランド

light

評価

ジャンル

本格未来架空航空戦記ADV

発売日

2005/09/30

HDD

1.5GB以上

価格

8800円

原画

黒鷲

メディア

DVD-ROM

シナリオ

早狩武志

音声

有り

モード

CG、音楽、シーン鑑賞

プレイ時間

約30時間

備考

初回特典:小冊子

はじめに

萌えなんぞ微塵も感じさせない生死を賭けた正統派軍事巨編。スルメイカのような旨味をじっくり味わいましょう。

あらすじ

主人公・萩野社は関東軍筑波戦闘航空団に所属する正規パイロット候補生だった。そして、彼が迎え撃つ敵は、関東独立に反対する関西軍(旧日本勢力)。社は、そして多くの若者達は航空学校で、短くも輝かしい青春を謳歌する。やがて一人は管制官、一人は地上部隊、そして社は戦闘機を駆り、守るべき人の名を胸に、各々の戦場へと駆けていく。しかし、アメリカの支援を受けた関西日本勢力の攻勢は日増しに強まり、戦況は悪化の一途を辿っていった……

シナリオ

エロゲーの枠を超越したシナリオ重視の正統派ヒューマンドラマ。果たして本作を架空世界の絵空事のように片付けてしまって良いのでしょうか。当事者にしか判らない現実と願望を語る熱きテキストはエロゲーでは珍しく希少かと。話は章立てになっているのですが、各章の初めに手記のようなもの流れます。これがかなり哲学入ってたりします。といっても無知な私には意味不明なテキストが多く、面白みはなかったですけど。

日本を東西に分割して戦争を起こす仰天シナリオですが、膨大な知識量を駆使して描かれた壮大な世界観と筆力に脱帽。戦闘機による燃えバトルよりも、個々の揺れ動く心理描写に重点を置いたシナリオですね。漫画のエリア88とか好きなら案外楽しめるかも。ザッピング風の複数視点を使いこなした高度な表現力も秀逸。

思春期特有の恋愛に対する戸惑いや曖昧な言動の矛盾、生死と隣り合うパイロットの宿命と戦争の恐怖、命の意味に苦悩し葛藤する様子等がひしひしと伝わりますね。そこに机上で論評する輩に駒として手足のように使われる予備学生の憤りと、組織のドス黒い思惑の為の情報操作が絡み合い、奥の深い物語を構築しています。

日常会話での笑いは殆どなく、政治経済や軍事関係の難解な専門用語てんこ盛り。ぶっちゃけインテリな作品です。エロゲーでこれだけ哲学的な文章を読まされたのはsense off以来かも。限りなく真面目な作品なので確実にマニア向けでしょう。しかも、丁寧なテキストの副作用なのか、冗長で中だるみするのは否めません。単純なエロゲーに慣れていると根気が必要かも。

最後のグランドルートまでプレイしないとこの作品の良さは味わえないと思いますが、結果を語らずに後は想像におまかせします的な終幕は微妙でした。最後を暈かすのは綺麗なんだけど消化不良で物足りなさも残ります。出来れば後日談を挿入してスッキリさせて欲しかったです。

システム

選択肢で進行するオーソドックスなADV。動作は軽快で大きな問題はなし。メニュー関係はかなり親切でキーボード対応。既読スキップは高速。バックログはホイール対応で音声の再生可。ディスクレス起動可。

難点はフォントが小さくて見難いこと。管制官やパイロット同士の会話は英語で行われることが多いのですが、英文の上に日本語でルビが表示されるのは親切ですね。でも、これフォントが小さすぎて読めないw。まぁ、だいたいの雰囲気だけ楽しむって感じでしたね。そりゃ英語の方がかっこいいんだろうけど、何もそこまで忠実にシミュレートする必要もないだろうに…。日本人向けの作品なんだから日本語で会話して欲しい。

グラフィック

イベントCGは差分を除いて84枚。その内エロCGが33枚。キャラによって枚数が極端に変わります。質はまずまずかな。背景は草薙に外注してるので安定して綺麗。

戦闘シーンで流れるムービーは斬新だけど数が少ないのが残念。テキストが上手いので勿体無い。静止画でもよいのでもっとバトルシーンを増やして熱いドッグファイトを見たかった。飛行中に画面が揺れる演出や、離着陸時に流れるグリペンの3Dムービーも新鮮。OPムービーはフライトシミュレーターみたいでめちゃかっこいい。

キャラデザは癖があるので萌えは薄いです。イベントCGと立ち絵でガラッと雰囲気が違うものもあり、バランス的には微妙かな。立ち絵のパターンはそこそこあるけど無機質。服装のバリエーションは良いけど、もう少し表情の変化が欲しかった。最初、立ち絵で二人並んだ時、どちらが話してるのか判別できなかったw。それと重傷で入院してベッドに寝たきりの状態で、普通の立ち絵を使い回すのは明らかに変。

サウンド

全33曲。これと言って耳に残る曲はないけど、戦争映画で流れるようなオーケストラ演奏主体の軍歌っぽいメロディと、静かに奏でられるピアノ曲が結構盛り上げてくれます。ヒロインのボイスは問題ないけど、主人公の声は合わなくて違和感あります。

──ボーカル曲紹介──
『アララト』 歌:WHITE-LIPS
OPテーマ。もの悲しい感じのメロディはかなりお気に入り。クライマックスで流れた時は感動。透明感のある細い声質は綺麗ですが、強いて言えばもっとパンチ力が欲しかったな。無理して高音を出した為に声量が落ちて辛そうな感じ。少しriyaさんに似てるかも。

『tell me a nursery tale』 歌:WHITE-LIPS
EDテーマ。ゆったり感傷に浸れるスローバラード。彼女にはしっとり風味が合ってる。

Hシーン

和姦オンリーで濃度は純愛系標準レベルかな。テキスト量と比較して明らかにCGが少ないのが残念です。通常背景とテキストだけで進行する手抜き描写が多すぎ。CGの使い回しも結構目に付きました。ラブシーンが綺麗なので本番よりも前戯でイチャイチャする方が楽しめるかも。トイレでの羞恥プレイ、お風呂シーン、匂いが香ばしいアナル責め等のシチュもまずまず。特にラブラブでこそばゆい会話が良いですね。テキストも丁寧で尺も長めですが喘ぎ声に新鮮味は無く飽きるかも。チュパ音はまずまずですが汁描写はいまいち。

回数は若菜が一番多くて5回ぐらいある。オレも若菜の中にグリペン投下…(死)
加奈子タンのロリ絵と幼児プレイも意外と萌えるかも。おっきぃの出ちゃう!
スカトロ絵が皆無なのは残念すぎ。…(;´Д`)

キャラ

お気に入りは「若菜」。主人公はクールだけど強固な意思を持つ静かに熱い野郎。
サブキャラはパッとしないのでキャラ立ちはいまいち。

水木若菜(みずき わかな) CV:榊原ゆい (70%)
航空管制予備生徒。舞台演劇が大好き。シナリオは一番良い出来。
ハローワールドなつみんの萌え声が復活? あの声に弱いのよ…。

日下部加奈子(くさかべ かなこ) CV:安玖深 音 (65%)
整備を手伝う為に航空団に出入りする附属校の生徒。
無邪気な笑顔をふりまく快活な少女で航空団のマスコット的存在。
主人公をお兄ちゃんと呼んでくれる…(;´Д`)

渋沢美樹(しぶさわ みき) CV:上坂 莉緒 (60%)
航空団一尉で杜と俊治の教官。ビシバシお仕置きして欲しかった。(爆)

澤村夕紀(さわむら ゆき) CV:安倍 有紀 (50%)
報道カメラマンの宿命? あのエンディングはスッキリしないYO。

長田圭子(おさだ けいこ) CV:草柳順子 (60%)
隠しキャラ。声は萌えるけどいまいち地味な腐女子だったり…。

総評

亡国のイージスのような軍事小説を彷彿させる壮大な内容で読み応えありました。面白いとは言えないけど、討論主体の緻密で熱いテキストに思わず引き込まれて読まされる感じ。手に汗握るバトルシーンよりも、世界情勢まで踏み込んで生死の意味を問う、知的なヒューマンドラマに拘った作りは賛否両論分かれるでしょうね。

あの堅苦しさを圧倒的筆力で捻じ伏せる手法が、万人受けするのか激しく疑問です。軟弱な萌えテイストを求めるユーザーには激しく嫌悪されるでしょう。それでも、新たなジャンルに挑戦してカタルシスを具現化させる力は、間違いなくエロゲー界トップレベル。軍事バランスが不安定なこのご時世だからこそタイムリーな、平和ボケからの脱却を謳った逸品かと。

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群青の空を越えて

シナリオ

システム

CG

音楽

萌え

エロ

死生観

インテリ

85

85

75

70

60

60

80

90



Update 2006/07/07  Copyright © yowamax