ある事件の謎を追うのと、その裏に隠された陰謀を阻止するのが目的です。サブリミナル効果や時間トリックをSFテイストに脚色した良作サスペンス。ちと粗が多く、タイムパラドックスについての説明が甘いような気もしますが、SFサスペンスとしては十分な面白さでした。
打越作品の真骨頂であるSFチックな世界観と終盤のどんでん返しは健在。本作でも巧妙なギミックに唖然とさせられました。前半は難解な謎が凝縮されて理解するのが大変ですが、先が気になる練り込まれた演出は相変わらず上手いです。意味不明な疑問点がスッキリ解消される衝撃の爽快感を味わえました。
主人公は二人いて交互に視点を切り替えながら物語は進行します。ザッピング形式で頻繁に視点が切り替わるので、かなり混乱しました。あの演出で正確に状況を把握するのは至難の業でしょう。これが張り巡らされた伏線のポイントになるので仕方がないのかもしれませんが…。
でも、強引なトリックでミスリードを誘発させるのは、若干反則気味かなぁと思ったり。相変わらず、良い意味で読者を洗脳する術だけは冴え渡ってますね。(ぇ
敵対する者との緊迫した駆け引きも見応えありますね。ただ、バトル演出はもっと頑張って欲しかったです。もっと熱い展開が見たかったな。それに、公安の捜査に粗が多すぎるのは頂け無いです。最初からきっちり捜査していれば、もっと早くヒントに気付いたハズですから。
選択肢で分岐するオーソドックスなADV。全体的には軽くて快適。動作に大きな問題は無し。既読スキップは超高速。バックログはホイール対応で音声の再生可。ただ、フルスクリーンモードに設定したのに、次回起動時に解除されてしまうのが不便。ディスクレス不可なのも残念。
鑑賞モードでは差分を含まず106枚。商業レベルの質は確保していますが、イベントCGは崩れ気味なのも散見されます。立ち絵はもっと表情のパターンが欲しいですが、全体的に綺麗で問題なし。
音声と口パクが合ってないのは違和感ありますね。適当に付けるだけの演出なら無い方がマシかも。あと、本作は血生臭いバトルがありますね。ボコってボコってボコリまくり。でも、ビジュアル的には銃で撃たれた時とか、流血描写が控えめでインパクトは弱いですね。
全32曲。全体的には普通でインパクトは弱めかな。幻想的でミステリアスな曲や、おどろおどろしいサスペンスにマッチした曲が用意されてました。個人的には、しっとり哀愁漂うピアノ曲の「Repressor」や「Voyager」が好きですね。何気に音楽鑑賞モードでCGや歌詞が表示される演出は良かったです。
何か視点が変わると主人公のボイスがカットされるのは違和感ありますね。声をカットしてネタバレを防ぐとか姑息な手法を使うのは如何なものかとw。
──ヴォーカル曲──
「third bridge」 歌:KAORI
OPテーマ。ノリノリでかっこいいね。
「プロセス」 歌:KAORI
EDテーマ。しっとり聴かせるミディアムバラード。
キャラは意外と平凡でした。お気に入りは性格がコロコロ変わるわがままなミュウかな。全体的にヒロイン達の萌え成分が明らかに不足してました。男性キャラにしても燃えが足りませんね。もっと斜め上を行く濃いキャラ設定だと、更に楽しめたと思います。情緒不安定な痛いキャラはいたけど、どのキャラも変人になりきれなかったね。
奥の深いシナリオで面白かったです。SFミステリー大好物なんで満足です。めまぐるしく変化する視点に思考速度を追随させるのが大変ですが、じっくり考えて整理しながら読んでいくと終盤の伏線回収の驚きも倍増するでしょう。やっぱ、打越シナリオは読み応えがありますね。何気に若干Ever17の匂いが漂いますが、EVEシリーズとかが好きなら楽しめると思いますよ。
最後に一言・・・ありんちょす!