地球が破滅するというよくあるSF設定。特に特筆すべき点はないが普通に面白かった。サクっと読破できるボリュームと内容の満足感のバランスが良い。
死を覚悟した者と死に急ぐ者。双方の思惑が絡み合い、地球で最後の純愛ドラマが生まれる。少女を守り自由を奪還することによって、次第に双方が人間らしい感情を取り戻していく。死生観が絡むストーリーながら前向きな思考により、暗くなりがちな物語に自由という明かりがさしていく。大抵、素朴で深い純愛物語というのは飽きやすいが、これは美麗な演出の恩恵で見ているだけで心が潤う感じ。
圧倒的なビジュアル表現により状況説明を極力省略。会話中心のテキストは読みやすい。前半はメイドのエリカやラヴィが盛り上げてくれたり、戦闘の駆け引き等、緊迫したイベントもあって面白かった。後半は純粋で静かな二人の恋物語になっている。こっちは他キャラの絡みが殆ど無くインパクトは低下する。このギャップの激しさには、演出に映画的手法を取り入れたとしても物足りなさが残る。
選択肢無しで一本道のノベル。オーソドックスなADVシステムで特に問題なし。バックログ時に音声の再生はされるが、一覧表示されないのは使いにくい。
鑑賞モードでは差分抜きで199枚。全体的に超美麗で高品質。特にOPムービーのクオリティは業界最高峰と言ってもよいぐらい秀逸で驚愕させられる。精細に描かれた風景もさることながら、作中に随所に散りばめられたアニメ的演出が凄い。紙芝居形式エロゲーにどっぷり浸かっていた身としては、演出タイミングも緻密に計算されていてかなり斬新に感じる。まさに理想的。綺麗な光源処理や工夫されたカメラワーク、計算された遠近感も職人芸。立ち絵を使わず全てイベントCGで表現する独自の演出手法も独創的で素晴らしい。
このシナリオにHシーンは不要だと思うので追加ディスクを購入するつもりはないが、全年齢版ということで流血シーンが排除されているのは残念。やはり、ナイフが刺さっても血が流れないのは違和感がある。キャラデザは萌え系。特にロリチックなシオンと、ツインテール眼鏡っ娘の真夜が可愛すぎ。目パチや口パクも良いアクセントになっている。
全32曲。高品質。スローテンポの幻想的なピアノ系癒し曲から、臨場感溢れる壮大な曲まで、作中で上手く使われている。
──ヴォーカル曲──
「little explorer」 歌:原田 ひとみ
パワフルなヴォーカルが冴え渡る。静と動の揺らぎが本作のイメージにピッタリ。メリハリのある良曲。
お気に入りはシオン。あのコンパクトバディと萌え声は反則w。
隠しキャラの真夜も可愛い。あの脳天気な明るさは暗く湿りがちな物語に潤いをもたらした。
主人公はクールで強くてかっこいい華奢なお兄ちゃん。ジョークの一つでも言ってくれればなぁ。
◆シオン CV:志村由美 <80%>
人類を救った最高の頭脳を持つフェリクス。年齢は100歳ほどだが外見は少女。
気高きお姫様で屋敷から外に出たことがない。温室育ちで純真無垢な一面もある。
髪を食べる少女…(*´∇`)
◆エリカ CV:中島裕美子 <75%>
シオンの姉で同じ遺伝子を持つフェリクス。おっとりのんびりした性格のメイドさん。
◆浅井・F・ラヴィニア CV:中村繪里子 <70%>
シオン・エリカの護衛を務める少女。戦闘のエキスパートでナイフを使用した戦闘術に長ける。
良作。もっとSF色が強い内容を予想していたが、良い意味で感動純愛物語になっていた。シナリオは想定内だったが十分楽しめた。又、超美麗なCGと良質な音楽による相乗効果は、圧倒的な臨場感をもたらしていた。やはり、minoriの演出クオリティは伊達じゃない。一概にハッピーエンドとは言えない、もの悲しい結末だったが、意外にも後味は悪くない。むしろ、綺麗な純愛を最後まで描ききったのは正解だった。胸のすくような余韻を残してくれたのだから……。
本作は賛否両論分かれると思う。個人的には、少ないボリュームでも濃密に詰め込んである内容は、ストレス無く読破でき十分に感動を味わえた。でも、人によっては後半のやや退屈な展開に飽きるかもしれない。派手な戦闘シーンもドロドロした葛藤描写も希薄。ただ死にゆく楽園によって救済されたいとう言う無垢な心情を自然に描いている。まぁ、それらはテーマである「地球で最後の恋物語」を表現するには必要な描写なのだが……。
終焉を独自の世界観から表現する設定で、日常会話中に笑い等は少なく若干シリアスな印象を受ける。無駄な会話は必要ないが会話中にも飽きさせない要素は必要だと思う。どんでん返しと言わないまでも、最後にあっと驚く小細工を入れて欲しかった気もする。二転三転するスリリングな展開を好む人には向かないが、純粋で綺麗なラブストーリーが好きな人にお勧め。