私立探偵「天城小次郎」は、事務所へ帰宅する途中、依頼をもちかけてきた一人の少女「乃依」と出会う。その直後、彼女は外車から下りてきた男によって連れ去られてしまう。同時に捜査線上に現れるいくつかのキーワード。【蝶】、【ブラー】、【ラベイユ】。一見無関係に思えるこれらの点も、捜査を進めていくうちに、やがて1本のラインへと収束していく。
一方、内閣情報調査室のエージェント「法条まりな」は、ある夜、ビルの屋上から飛び降りようとする一人の青年を見つける。必死の説得を試みたものの、青年は謎の言葉を残し自らの生命を絶つ。青年の遺言をもとに捜査を開始したまりなにふりかかる様々な障害。いつしかまりなは、何者かの陰謀により殺人犯として警察から追われることになってしまう。
いや〜どっぷり嵌りました。かなり面白かったです。本作は「天城小次郎」と「法条まりな」、双方の視点から捜査を進めていき、巧妙に仕組まれた事件の真相に迫る、一本道のザッピング・ミステリーです。オカルトや非現実的なSF要素が混入され、シリアスで難解な話に仕上がっています。終盤に魅せるドラマチックな伏線回収劇も圧巻です。インテリかつぶっ飛んだ論理的な説明によって見事に一連の事件を収束させています。
何と言っても、あの名作「Ever17」の世界を構築したシナリオライターさんですから、一筋縄で終わる筈がありません。本作でもその片鱗が垣間見え、緻密に計算された巧妙なトリックでミスリードを誘発させてくれます。EVEシリーズと言うと、ハードボイルド的なスリリングな展開が売りでしたが、本作はホラーサスペンス色の方が強いです。意味不明で小難しい解釈を大量に散りばめて読者を混乱させ、徐々に洗脳していくのがよっぽど好きなんでしょうね。実際、プレイ中に記憶が飛びました。←それ睡魔に襲われてます(笑)
個人的に正統派ミステリーは好きなんですが、本作ではシリアスな世界観を保護しすぎて、ギャグや萌え要素が希薄になり、日常会話等の面白さが犠牲になっています。謎解きがメインのシナリオなので、キャラの内面を隠さざるを得ないのですが、読者を単なる傍観者にするのではなく、その代わりとなる感動的なスパイスで感情移入させて欲しかったです。もっと各キャラにインパクトを持たせて、個々の魅力を引き出すような飽きさせない工夫が必要かと。
このシリーズの特徴である「マルチサイトシステム(ザッピング)」では、一度聴いた会話は適度に省略する等、かなり上手く使われていて中だるみせずに読めました。
うちの環境(WinMe)では途中でインストールエラーが発生したので、OHPのサポートに書かれている通り、DVDの内容をHDDに手動でコピーしてからセットアップを実行。余計な手間がかかったけどインストール完了。でも、解凍処理遅すぎw。
マップでの場所移動と、「調べる」や「話す」等のコマンド選択で進行する一本道のADV。従来のものから多少改善されていて、一度選んだコマンドは解除されずにそのまま引き継がれます。後は調べたい場所等をマウスで選ぶだけです。ただ、コマンドアイコンが画面右端に固定されているので、マウス移動が大きく無駄に時間がかかります。これは結構めんどくさい。
又、基本的にコマンド総当りは継承されていて、全く関係のないところを選択しないと話が進まなかったりします。操作性が悪いのは相変わらずですな。コマンドフェチ以外にも配慮して、最小限の選択でサクサク進む仕様にして欲しかった。(苦笑)
メッセージウインドウが透過されているので、テキストと背景が重なって凄く読み難い。メッセージウインドウの背景色やテキスト色の変更、フォントの拡大等、何らかの配慮が欲しかった。
既読スキップは総当りの作業感を軽減してくれますが、話が変わる度に解除される仕様は頂けない。バックログはホイール対応で音声の再生可。ディスクレス起動不可だし、起動する度にフルスクリーンモードが解除されるのも不便。
鑑賞モードによると差分を含まずに219枚。内訳は通常イベント130枚、Hイベント17枚、背景72枚。枚数が多いわりには結構奇麗に描かれています。背景はシンプルでちょっとアッサリした感じがしますが。ハリウッド映画を彷彿させる、実写とCGを合成したOPムービーは新鮮。
キャラのズームアップや背景スクロール等の小細工は渋い味出してるけど、全体的に演出は地味。今までのEVEシリーズのような、かっこいいアニメは挿入されていない。立ち絵は口パク装備とか結構良く出来ていますが、バリエーションが少なく表情も寂しいです。でも、キャラデザは乃依やアルトのようなロリ系の娘が良い感じ。イベントCGはバランスが崩れたものも見受けられます。主線が太くて粗かったり、処理が不完全なのも…。
全48曲。その内、ボーカル入りは2曲。ホラーサスペンス特有の冷たいピアノ曲は作品の雰囲気とマッチしてました。特にミステリアスな音色の「the
sands」が良かった。でも、全体的に地味。無難な曲ばかりで印象に残り難いです。EDテーマの「いつかみた青い空」は、しっとりしたバラードでどこか安らぐ良曲です。
ボイスや効果音も無難な感じ。コンシューマ版とは違うみたいですが、そんなに違和感ないです。でも、まりなの声は以前のEVEと違う感じ。ちと低くなって最初違和感ありました。プレイしてると次第に慣れてきましたが…。
濃度は純愛系標準。各キャラ1回づつでCGは1キャラ3枚程度。シチュ的には着衣Hがあるけど全体的にオーソドックス。PC版で新たに挿入されたわりには、前後のシチュエーションと上手く溶け込んでいて違和感は感じなかった。エロテキストは官能小説っぽい冗長な表現がある。
汁描写はヌルいけどチュパ音はそこそこ。挿入時や放出時にクチュっと鳴る生々しい効果音は笑える。どのキャラも喘ぎは大げさでわざとらしいけど、乱れ具合はなかなか良い。あと、船上Hやピストン運動の臨場感を出す為に、画面を揺らしたりスクロールをさせてます。ちと酔いそうになるけど静止画だけよりはエロくていいね。
予約特典の氷室ディスクは30分ぐらいで終了。シナリオなんか皆無で、えっちぃ一回だけ。本当にオマケディスクでしたw。というか、氷室は本編の出番少なすぎ。結構好きなキャラだけに、もっと活躍して欲しかった。
どうでもいいけど・・・
アルトが20歳って設定無理ありすぎw
てか、どう見ても中高生だろう。まぁ、剥いたら出るとこは出て結構発育してたけど。 バディスペックはもっとチビッコにして欲しかったでも良かったな。(笑)
それと・・・
小次郎は見境なく食いすぎ。(爆)
やっぱ、お約束の主人公特権ですか…。
更に、ミカエルは・・・
「この愚息にも甘い蜜を貰えますかな」
工エエェェ('A‘)ェェエエ工…キモス!
紳士だった彼が官能小説に出てきそうな言葉責めのエロじじぃに豹変。
お気に入りは食べ頃のアルト。小次郎は大活躍で相変わらずかっこいいね。まりなは罠に嵌りすぎて、今回は敏腕エージェントとしてのかっこよさは影を潜めた感じ。
◆乃依(のい) CV:春日アン (60%)
記憶喪失の少女。情緒不安定で心を閉ざしている。言葉は刺々しくクール。
口癖は「ギョーザ」。
◆法条まりな(ほうじょう まりな) CV:風音 (45%)
任務達成率99%を誇る内調のエージェント。
◆エフィ CV:歌織 (55%)
児童養護施設ラベイユの園長。清楚な風貌の落ち着いた女性。
◆桂木弥生(かつらぎ やよい) CV:かわしまりの (50%)
桂木探偵事務所所長。言葉遣いは荒いが寂しがりやで繊細。ヘビースモーカー。
◆アルト(あると) CV:春日アン (65%)
明るく無邪気で愛嬌のある少女。心の奥底に深々とした傷痕を残す。
◆三六九(みろく) CV:カンザキカナリ (40%)
腕利きの情報屋で中央公園の粗末な小屋に住んでいる臭いお姉さん。
◆氷室恭子(ひむろ きょうこ) CV:藤森ゆき奈 (55%)
あまぎ探偵事務所唯一の所員。高いハッキング能力を持つ。
SFホラーミステリーとしては十分な面白さで満足です。EVEシリーズの代表作と言えば「burst error」ですが、その世界観を100%踏襲するのではなく、別方向にスパイスを効かせたのがこの「new
generation X」です。前者がドラマチックな展開とギャグでテキスト全体の面白さを追求したのに対し、後者には緻密に仕込まれたトリックを洗練されたテキストによって表現し、難解に施錠されたトリックを徐々に紐解いていく楽しさがあります。
後味を含めた爽快感はburstに軍配が上がりますが、本作にはまた違った良さがあります。要はカリスマ的なを手法を用いて一気に洗脳する豪腕の巨人か、一見地味でもコツコツと伏線を張り巡らす緻密な細工職人かの違いですね。
今回のプレイ時間にはシステムの仕様上、無駄に作業させられた時間も多く含まれますが、それを考慮してもボリューム的には十分で読み応えがありました。EVEシリーズの伝統であるコマンド総当りに耐性のある方が前提ですが、Ever17やDESIRE等のファンタジー設定が好きな方にお勧めです。まぁ、シリアスで難解な話なんで読み手を選ぶのは確かですけど。それと、萌えやエロに過度な期待は禁物です。