過去編と現在編の二部構成で演劇に隠された陰謀と悲劇の真相を解明していく青春群像劇。物語は淡々と進行する印象がありますが童話とかファンタジー風の世界観が新鮮です。その中に各キャラが違和感なく溶け込んでいて独自の雰囲気を醸し出しています。
本作の特徴はキャラの視点を頻繁に切り替えることですね。これは仕組まれた陰謀やキャラの特徴を理解する上でも分かりやすかったです。この視点切り替えを巧みに使うことにより、各キャラの心情や状況がリアルに把握できます。
特に中世ヨーロッパ風の雰囲気と貴族達の思惑が絡み合うクロハネ編が良かったです。シリアスな緊張感と駆け引きは読み応えがありました。演出面では剣を使った戦闘シーン等もありますが、基本的に相手の先を読む頭脳戦が主体なので派手さはないですね。それでも、サスペンス風のドラマチックな展開には凄く引き込まれました。一方、シロハネ編では列車で旅をしながら演劇に関する情報を集めていく、青春ドタバタ冒険劇風のノリの良さが好印象でした。
女の子同士の絡みが中心の物語なので、主人公に感情移入するというよりも群像劇を傍観するような感じです。基本的に一本道なので、一度クリアすると後はCG回収作業的になってしまうのは残念。又、共通ルートが多い為にスキップ時間の長さが気になりました。何気に中盤以降のマッタリ感は若干中だるみを感じるかも。
それと、各ヒロイン個別ルートのインパクトが弱いです。ぶっちゃけエロシーンが追加されたぐらいしか違いが感じられません。百合シーンは綺麗に描かれていますが恋愛描写の過程が希薄で早急な感じがします。
選択肢によって分岐するオーソドックスなADVタイプで動作は軽快。A.C.Vという視点選択システムを装備していてシナリオ分岐に幅を持たせています。これは時々キャラアイコンが出現して自由に視点を選ぶことが出来るものです。ただ、このキャラアイコンが超小さくて顔の判別が難しいのが残念ですな。
フルスクリーンモードが記憶されないのは不便。毎回起動する度に設定し直すのは面倒。既読スキップは高速。でも、既読判定はスタート時に機能しない場合がありました。視点変更の度にスキップが止まる仕様もめんどう。バックログはホイール対応で音声再生可。ディスクレス可。
イベントCGは鑑賞モードによると差分抜きで128枚。その内エッチシーンは25枚。CGは高品質だしキャラデザもお気に入り。特に、ココのお目目を縦棒のみで表現するとか、単純な人形デザインから無邪気な可愛さを生み出す巧みの技は、国宝人形造形師を凌駕するセンスを感じさせます。
背景は緻密に描き込まれていて超美麗。情緒のある古風なヨーロッパ風の建物や自然の風景が良いですね。列車が疾走するスピード感溢れる爽快なOPムービー等の演出も凝ってます。でも、戦闘シーンは迫力不足でショボいかな。
全40曲。その内ボーカル入りが3曲。ゆったりとリラックスできて睡魔誘発させる癒し系の曲から、賑やかな明るい曲まで揃っていて質は高いです。特に、しっとりしてもの悲しいピアノの音色が心地良いです。クロハネ編で使われた交響曲っぽいクラシック音楽は渋いですね。戦闘シーンの曲もかっこいいな。
──ヴォーカル曲紹介──
「Alea jacta est!」 歌:Rita
OPテーマ。明るくノリがいいミディアムポップ。楽しげな列車の旅が目に浮かぶような良曲。
「it's just farewell」 歌:Rita
挿入歌。これもノリがいい爽快ソング。
「Memories are here」 歌:観月あんみ
EDテーマ。全て英語で歌われるしっとりバラード。
純愛系和姦オンリーですが従来のエロゲーと一線を画すレズプレイが中心。といっても淫靡な感じは無く綺麗な描写で、ネチネチというよりはサラッとした感じなのでエロ度は薄いです。実用性を求める人には物足りないでしょうが、少女漫画チックな初々しく淡い雰囲気は意外と新鮮。
絵はベルとかエファとかワカバとか微乳キャラが美味しいですね。縦横無尽に見せ方を工夫した全身スクロール表示や、ズームアップ等のカメラワークも工夫されています。ただ、喘ぎ声もそうですが、クチュ音とか効果音が弱いですね。もっと頑張って欲しかった。
各キャラ共に突出した個性は無いですが、この物語の雰囲気にピッタリマッチしてます。
お気に入りはワカバかな。強気で萌え声の幼馴染に弱いので。(笑)
セロという鈍感な男の子の主人公もいますが、ちと普通すぎてインパクトは弱いですね。
あくまでこの物語の主役は姫様と人形ですから。
ココのたどたどしい喋り方も面白いね。言葉を区切る独自のアクセントはインパクト大。
あの無邪気な可愛さは反則でしょう。
◆アンジェリナ・ロッカ CV:安玖深音 <65%>
女優を目指す情熱少女。
◆ベル CV:五行なずな <70%>
国宝人形技術師であるレインに作られた一枚羽根の人形。
◆ココ CV:成瀬未亜 <70%>
独自の言葉の区切り方が愛らしい人形。無邪気な言動で萌えを量産するボクっ娘。
まねっこが得意。
◆ワカバ・フォーレ CV:佐本二厘 <70%>
小説家志望の女の子。地元の演劇祭にエントリーして出演者探しの旅に出る。
脳天気でテンションが高い元気娘は楽しいね。
◆クリスティナ・ドルン CV:安玖深音 <65%>
白の国の姫で歴代トップクラスの人形調律師。
◆エファ CV:五行なずな <65%>
美しき羽根を持つ赤の国が誇る国宝人形。
超良作。ドタバタ青春群像劇から紡がれる爽やかな感動。視点切り替えの妙が成す心情表現は斬新でした。背景CGが醸し出す美麗な景色を満喫しながらの列車の旅も癒されます。冒険青春映画のような分かりやすいドタバタ展開が続くかと思えば、シリアスな過去編をミックスする飽きさせない構成が上手いです。
残念ながらこのブランドは解散してしまったようですが作品の完成度は高いです。売りのレズシーンは濃厚なものでは無いので、真性を期待してる方には物足りないかもしれません。私はそれ程気にせずに楽しめました。ファンタジー好きのシナリオ重視派にお勧め。