キナナキノ森

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シナリオ

お馬鹿でトチ狂った女性主人公視点が美味しい。希望を持って夢を追いかけるも、その代償は大きく無慈悲な運命が負のスパイラルを生む。そして世の現実に絶望して幻想へ逃避する。それでは、あまりに鬱展開すぎるので、救済要素に魔王というファンタジー設定を盛り込んで成長物語に中和した感じだろうか。

第一部で個性的なキャラによる日常シーンはコメディ調で面白く飽きさせない。シリアスシーンで急にギャグが混入するのは好みが分かれそうだが、ほんわかして息抜きのスパイスとしては良いと思う。第２部ではシリアス展開でどん底に落としといて、第３部で試練を乗り越え重荷だったキズが癒され余韻を残すように収束。ぶっ飛んだ中二病全開テキストに嫌悪感はあるが、伏線も綺麗に回収されて見事な完成度だ。

何気にエロゲネタとかアニメネタが多いから、知らないと何それ？って感じだろう。ことごとく裏切られ鬱の連鎖から異常行動を起こすとか、ホラー要素混入の異質な猟奇制裁とか、知能戦というか騙しあいも面白い。ちと、ひぐらしとか、キラークイーン入ってるかな。もう、何でもあり。同人やりたい放題だな。

夢を追うということは、予期せぬ因果でレールを踏み外し、過酷な運命を辿る可能性を秘めている。誰もが危うく脆い現実に流され、計画通りの幸運を手に入れるのは、ほんの一握りだ。そんな、大多数の庶民の想いを込めて、夢や希望を託したメッセージが込められているのかも。

システム

選択肢無し。一本道のビジュアルノベル。ツールはNscripterで特に問題はない。スキップは未使用。バックログはホイール対応だが一覧表示はできない。

グラフィック

鑑賞モードでは差分抜きで４０枚。背景はいかにも同人らしい、取り込み画像を加工したようなシンプル絵。キャラデザは決して上手くは無いけど、どこか無機質でカクカクした冷たい感じの印象を与え、ホラー的なキモさを増幅させている。

主人公の「かぼ」は、テキストウィンドウ横に顔絵が表示される。通常時のキャラデザはロリ絵だが、調子に乗り出すと百面相みたいにコロコロ変化して面白い。かぼがツッコミを入れる時は、ちびまる子ちゃんのように、顔に縦線が入ってしらけた目に豹変したり、口が１８０度曲がったりする。そんな半端じゃないデフォルメ顔が笑える。

ＯＰムービーは古代壁画のようなタッチで描かれてミステリアスな印象を与える。ホラー映画等で使われる、古い映写機で撮影した映像を再生しているような演出も新鮮だった。乱れた映像の影響でテキストが読みにくいのが難点だが。

サウンド

全４２曲。その内、ヴォーカル曲が１曲。シンプル・イズ・ベストで涙腺を刺激して全体的に質が高い。しっとり聴けるミステリアスで落ち着いた暗めのピアノ曲が多く、独自の雰囲気を醸し出している。又、映画のＢＧＭで使われるような壮大な曲等、幅広いジャンルの楽曲を揃えていて飽きさせない。

──お気に入りの曲──
「きみは風」　歌：NanosizeMir
ＥＤテーマ。若干オペラ風？　スピード感と迫力ある歌唱による前向きな曲。ただ、スタッフロールが流れるＥＤとはマッチしない気がする。微妙に違和感あり。

「Soldiers(piano ver)」…悲しいピアノの音色が心に響く。キナナキの世界にマッチ。
「Adventure」…アニメ「銀河漂流バイファム」のＯＰと似た、明るい曲。
「Simple time」…元気が出るピアノ曲。
「蛍」…タイトル画面で流れるオルゴール系の曲。回想シーンでいい味出してる。
「風の翼、窓の冬」…哀愁漂うどこか懐かしいメロディ。
「indide」…切ないピアノ曲
「contact」…どん底から這い上がる勇気を与えてくれる曲。

キャラ

男性キャラを含め、みんな個性的で掛け合いが面白い。
ボコられても、すぐに復活する「かぼ」ってどんだけタフやねん。
最初、かぼが幼女に見えたわ・・・遂に俺の目もモウロクしたかｗ。
脳みそがスポンジ製だから、お漏らしばっかするし。（ぇ
でも、かぼの一人ツッコミはアホすぎて笑えるんだわ。

魔王は爺ちゃんの癖にイケメンとか…まぁ、それは許せるにしても、アレは鬼畜すぎ。
（ネタバレ反転）
→問題は、かぼが魔王に食われたかどうかだ。リボンの暗喩はどこかで見たパターンだけど、食われたんならＣＧを使って表現して欲しかった。鑑賞モードに、コンプ祝以外に未使用ＣＧが一枚登録されているが、きっちり演出して欲しかった。無垢なかぼに同意もなく無意識下で奪う行為は、悪魔なりの愛情だったのかもしれないが…。←

総評

良作。これは面白かった。コメディに猟奇やファンタジー要素混ぜて、比較的読みやすい作品になっている。綺麗に伏線も回収されて読み応えあったな。恋愛要素は無きに等しいけど、ホラーミステリーとか好きならお勧めできるかと。フリーでこの完成度は凄い。まさに魂の逸品。

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Update 2010/10/24　　Copyright © yowamax