主人公、立花慎之助は幼い頃から骨董屋に住み込みで働き続けていた。何の取り柄もない慎之助だが十年間続けていたことがある。それは、人々を笑わせることができる、ひょっとこのお面作りだった。その素顔を、お面で隠し続けてでも、哀しみなんて世の中にはいらないと思っていた。ある夏の日の昼下がり、慕っている寺子屋の先生から、町外れの古寺に住み着いている少女の話をこっそりと聞かされる。そしてその夜、慎之助は古寺に立っていた。……そこで、独りの少女と、般若のお面に出会った。
家族の絆とか温もりをテーマにした優しさと思いやりで満たされたテキストです。着実に芽生えていく恋愛感情が、運命の悪戯のように偶然出来た人生の分岐点で、更に強固なものとなり成就するありきたりな設定です。特に捻りもない単純な純愛ストーリーで、笑いも萌えもないテキストを読み続けるには、それなりの根気が必要かも。と言ってもプレイ時間は短いので許容できる範囲ですが。
心が深く傷つき人を信じられなくなった少女、悲しみを隠し人の為に一生懸命な幼馴染、過去の呪縛から自分を見失った主人公。この魂の仮面を被った三人の繋がりをメインに物語が展開されます。魂が宿る妖しげな般若のお面の力で偽りの仮面が剥がれ、隠された本心に気づいて救済される単純なエロゲー設定なので、過度な期待は禁物です。運命とか言われると少し「ひぐらし(同人)臭」が漂いますが、辻褄が合わなくても深く考えずにマッタリ読破しましょう。
でも、絶体絶命の決闘シーンであの奇跡の大逆転は陳腐ですね。主人公は洗脳系ペテン師? まぁ、強引な仕掛けで運命に抗い幸福を手に入れる不思議展開には違和感を感じますが、個人的には、すすきシナリオの方がお気に入りです。互いに通じ合った強固な想い、家族の絆は決して砕けないと言うことで…。
ツールは吉里吉里。特に大きな問題は無し。テキストは大きくて読み易いけど、漢字用のルビは小さくて読めない。又、選択肢がメッセージウインドウ内に表示されるので紛らわしい。通常のテキストと区別する工夫が欲しかった。キーボード対応は親切。既読スキップ速度は普通。バックログはホイール対応。ディスクレス起動可。
差分を除いてイベントCGは13枚(その内エロCG6枚)、背景は11枚。テキスト量に対してCG枚数が少なすぎますが質は良いです。特に背景は緻密に描かれていて綺麗です。立ち絵のパターンはそれなりにあって田舎娘の雰囲気も出てるけどちょっと微妙。でも、イベントCGは可愛いです。OPムービーは古風な感じで落ち着きますね。
全22曲。ボーカル曲が無いのが残念ですが古風な作品の雰囲気にマッチして新鮮です。特に三味線を使った曲がいい味を出してますね。全体的にチャイナ風味な民俗音楽っぽい感じですが、しっとりと落ち着いた曲が多いです。優しく奏でられる儚いピアノの音色も心地良いですね。回想でオルゴール系を使うエロゲーの常勝パターンです。
──お気に入り曲──
「雫」…繊細なピアノの旋律が涙腺を刺激します。
「風鈴に乗せて」…ピアノ中に風鈴の音色が絶妙に溶け込んでます。
「雪月花」…静かに重なったピアノとギターが心地良いです。
「桜〜恋歌〜」…OPテーマ。スローテンポの幻想的な曲。
淡白でおまけ程度の薄さです。殆どが一枚絵でチュパ音もエロボイスも皆無。せめて汁差分ぐらいは欲しかった。何気に立ち絵だと華奢に見えるんだけど脱ぐと結構ボリュームあります。
ヘタレの主人公は好きになれないw。ヒロインも個性が不足気味。
■夕葉(ゆうば) (60%)
山奥の古寺に住み着く芋少女。人を憎んでいるが主人公には心を許す。
愛想が悪いツンデレ風味の妹キャラか?
■秋月すすき(あきづきすすき) (60%)
幼馴染で牛鍋屋の看板娘。明るい性格で人気者。笑顔が可愛い。
■吉田桔梗(よしだききょう) (50%)
寺子屋教師。必殺技は三十路女パンチ。親父爆弾ですぐ壊れる(笑)
何で攻略対象外なの?(^^;
CGとテキストのバランスがいまいちですが、同人の純愛モノとしては楽しめた方でしょう。CG枚数が少ないのが難点だけどキャラが可愛いのと背景が美麗なのが救いかな。特に音楽はかなり良質。ただ、シナリオに新鮮味がなく演出もしょんぼりなので、かなりマッタリ感が漂って中だるみ気味です。大して萌え展開もないテキストを辛抱強く読み続けても、摘み食い程度の夜のオカズで癒されることはないでしょう。でも、コストパフォーマンスは悪くないので、ちょっぴり感動できるお手軽な作品と割り切れば、それなりに楽しめるかと。
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