ある事情で全てを失った主人公の宏和は、一人旅で放浪の日々を送る。ある日、嵐に遭遇して倒れた宏和を救ったのは、見ず知らずの女性「理奈」だった。
最初はレストラン営業シーンが中心で、よくある日常マッタリ展開が続くのかと思ったのですが、後半の急展開でやられました。前半にちらほら見せられた伏線はそういうことだったのかと、唸らせる衝撃のドラマが用意されていたのです。解明編ともいえる後半こそが本作の肝でしょう。
かなり駆け足な展開ですが、シリアス色を絡めながらも綺麗にまとめ上げた物語は一見の価値あり。コンパクトにまとまってサクッと遊べるお手軽作品に飢えてる私にはスマッシュヒット。興味が湧けば小腹が空いた時にでも是非試食して欲しいです。このまま埋もれさせるのは勿体無いと本心で思った逸品ですから。
選択肢無しの一本道のノベル。ツールはNscripterで問題なし。バックログはホイール対応。
鑑賞モードによるとイベントCGは9枚。全て一枚絵。昔のミステリーAVGを彷彿させるクオリティですが、物語を紡ぐには問題なし。
背景はシンプルでクオリティは一定していません。でも、中には細かく描き込まれて結構綺麗なのもあります。雨のシーンは合成では無く、ラフ画チックな一枚絵で表現してたりします。この辺は商業慣れしていると見劣りしますね。移動シーンでは背景パターンがそれなりに用意されているので飽きずに楽しめました。
立ち絵は線の処理が粗く、お世辞にも上手いとは言えませんが、キャラの雰囲気は掴めますね。出来ればもっと立ち絵のパターンを増やして欲しかったな。表情の変化が乏しいと無機質な紙芝居みたいに見えて寂しい。理奈はお姉さん風で萌え要素は皆無ですから悪しからず。
ていうか、理奈の無表情が怖いんですけど…。(汗
あっ、バスルームでのお色気ショットは、ちょっぴり目に栄養を与えてくれます。(笑
音楽鑑賞モードはありますがヴォーカル曲しか登録されていません。(汗
一応、アーカイブされているのは27曲。その内ボーカル入りが2曲。これが全て使用されているのかは分かりませんが。ショットバーのBGMとか上品な雰囲気を醸し出していて良かった。全体的にピアノ中心の落ち着いた曲が多いですが、後半のサスペンスシーンで、シリアスな曲が良い味出してました。
効果音は貧弱です。雨やシャワーの音が無らずに、テキストだけで「シャー」とか表現していて、ちと違和感ありました。
──ヴォーカル曲──
「会いたい」 歌:悠花
スローテンポのしっとりバラード。感傷に浸るシーンにマッチ。
起伏が無く淡々としたヴォーカルだけど、透明感のある綺麗な高音は耳に優しい。
「Good-bye
forever」 歌:KID
この掠れた男性ヴォーカルは微妙。音域が狭いのに無理に高音を出しすぎて息切れ。
宏和は真面目な好青年ですね。
でも、キャラ少なっ! 殆どが宏和と理奈の二人だけで話が進むし…。
◆ 三崎理奈 (20%)
一人でレストランを経営している女性。クールで無表情。仕事には厳しいが少ない言葉の中に優しさを漂わす。どんな緊急事態でも動じない彼女に乾杯。
果たして宏和は気の強そうな彼女を堕とせるのでしょうか…。(ぇ
こんな感動物語がフリーで遊べるなんて、有り難い世の中になったものです。短時間でスッキリ収束する綺麗なシナリオは、ダラダラと肥大化する商業作品と相反して、ライトユーザーや時間の無い方に需要があると思われます。このようなお手軽な作品は中身がスカスカなことが多いのですが、本作はサスペンス風のドラマチックな設定が楽しめたので一気に読破できました。
ハッピーエンドでは無いのですが、終盤の涙腺ウルウル展開も心地良い余韻が残り後味良好です。この快作に出合えた幸運に感謝したいですね。素晴らしい作品を生み出された製作者様ありがとうございます。流石にビジュアル面では商業等と比較するのは無理がありますが、次回も胸のすくような作品に期待大です。