廃墟離島と呼ばれる小さな島には、人の念を喰って形を成す化け物が出る。その名をコゴリ鬼という。役目を負って島を訪れ、コゴリ退治に挑む娘・ミメイ。彼女はそこの住人との暮らしに溶け込んでいく。
シリアスな伝奇モノだが、終盤に解き明かされるカラクリに驚き、綺麗なエンディングに感動。戦闘描写は奈須きのこ風味を妄想させるが迫力不足は否めない。もう一押し突き抜けたものが欲しかった。全体的に漂うシリアス感は月姫を彷彿させる。テキストは読みやすいけど、少々難解な話なので読み手を選ぶかも。
キャラは着物姿が多いけど送電塔から電気が流れているので、戦前の微妙な時代かな。ミメイの古風な親父語は笑えるが、気真面目で遊びのない日常会話は退屈。途中でマッタリと中だるみするかも。複数視点で話が進むのは良いが、どの視点でも同じような言い回しになっていて、キャラのインパクトは弱い。チビッ子のハナちゃんが、あんな大人っぽい思考をするのには違和感あり。視点切り替えをいまいち活かしきれていない。
ギャグで笑いを取るような内容ではなく、正統派伝奇ファンタジーで萌え要素は薄いので、ラブラブな純愛展開は期待できない。でも、伝奇ホラー系が好きな私は結構楽しめた。説明口調の淡々とした無機質なテキストの中に、感動を増幅させる伏線が埋め込まれてる辺りは新鮮。
画面全体にテキストが表示されるビジュアルノベル。選択肢無しの一本道。ツールは吉里吉里で特に問題なし。バックログはホイール対応。ジョイパッド対応。
鑑賞モードによるとイベントCGは28枚。殆どが一枚絵。同人らしいクオリティだが、見せ方が上手で効果的。EDムービーは心地良い余韻が残っていい感じ。
時代設定に応じた、癖のある古風なキャラデザだが、女性キャラがいまいち可愛いくない。萌え分は微量。着物姿のせいなのかミメイは何故か大柄に見える。見た目とテキストの印象が微妙に一致しない。アニメで表現された雨や雪の演出は効果的だった。
音楽鑑賞モードがないのは残念。一応、アーカイブされているのは17曲。全体的に綺麗で良質。フリー素材を厳選して上手く使われている。特に戦闘シーンのBGMが臨場感ある。しっとり癒し系の曲もいい。ホラー系のおどろおどろしい曲やミステリアスな悲しい曲もいい味だしてる。個人的には幻想的な音色の「月の記憶」とか良かった。
──ヴォーカル曲──
「静かな空」 歌:瀧沢一留
EDテーマ。スローテンポのしっとりバラードで、澄んだ歌声が感動シーンにマッチ。
何気に田舎風ロリっ子、ハナちゃんがいい。
◆ ミメイ (40%)
未来を垣間見る異才を持つ娘。
気になる点もそれなりにあるが、伝奇モノとして十分面白かった。完成度の高いシナリオと演出は一見の価値あり。これを殆ど一人で作ったとしたらマジ凄い。サクッと読むには丁度いいボリュームなので、お手軽な伝奇モノを求める人にお勧め。ベクターのランキングで常に上位にランクインする人気作品だが、シナリオ重視のフリーノベルを探索中の方に是非読んで欲しい。
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