セツミ15歳──心に深く刻まれる未来への伏線。それはセツミにかけられた魔法。
眩しかった日のこと…そんな夏の日のこと。
前作から6年前の話。生と死について焦点を当て、不治の病を患った当事者と周りの人々の、心の奥底にある思い通して、命の有り方について問いかけるような内容でした。ただ、あまりネガティブな感情が表に出ていないだけに、鬱要素は少なく読みやすいと思います。それでも悲運の連鎖によって泣き要素は増えてます。
家族の負担が重荷となり更に心が病んでしまう泥沼状態に陥ったり、死に対して自分の意思を尊重して貰うことが、閉ざされた未来での数少ない選択肢のになったりして、見えない出口に翻弄される様子が重く伝わります。去る者と残される者双方の痛みや想いを、エロゲー界の詩人こと片岡とも氏独自の言い回しで端的に描くことによって、効率よく読者の感情を揺さぶることに成功しています。
あと、本作はナルキ1への伏線が散りばめられ、後付で作られたとは思えない描写が散見されます。これは死生観という概念を元にあらかじめ綿密に構想が練られていた結果でしょう。テキストは会話中心で説明文少ないのが良いですね。短い詩を綴ったような感じ。
選択肢が無い一本道のノベル。ツールはNScripterで特に問題無く動作しました。ただ、文字が小さくて読み難いし、フルスクリーン表示にしても画面が拡大されないのは頂けない。バックログはホイール対応で音声の再生可。ちなみにナルキ1、2両方読破するとメニューにエピローグが追加されます。忘れずに読みましょう。
質は前作と比べて格段に綺麗になっています。
基本的に背景のみで立ち絵は無いです。又、会話シーンでのキャラ名表示もないので、ボイスONがお勧めです。キャラの表情はテキストやボイスから脳内補完しましょう。ぶっちゃけ、立ち絵を入れたら「ひぐらし…」みたいなサウンドノベルと同じような感じになるかも。何か表に出す情報を極力押さえるという前作の趣旨からは逆行しているように思えますが…。
背景は画面の上下が切れた映画風のワイドスクリーン表示。通常のディスプレイで表示すると横長に小さく表示されるのが残念。これは挿絵程度の感覚。ただ、ドライブシーンで車を表示させておいて、座席に人がいないのは違和感あります。ムービーはかなり凝っていて気合い入ってますね。良い出来です。
全26曲。その内ナルキ2で追加されたのが14曲(ボーカル入りは2曲)。落ち着いたピアノ曲やギターサウンドが心地良いです。クオリティが高いのは相変わらず。追加されたボーカル曲が雰囲気作りに貢献しています。
ボイスは良いですね。ねこねこ関連声優を中心に有名な方が参加しています。久しぶりにポンコツさんの鼻声で癒されました。つーか、みずいろの雪希さんとセツミは同じ声に聞こえないw。あの低い声でボソボソと喋る演技力は味があるけど…萌えは皆無w。
──お気に入り曲──
「ナルキッソス」 歌:eufonius
良質バラード。riyaさんの透明感溢れるなクリスタルボイスは健在。でも若干声量不足?
「15cm」 歌:KAKO
しっとり落ち着いたバラードで良い雰囲気。ボーカルも上手。
「終末の過ごし方より」…儚く悲しいメロディ。
「スカーレット」…今や泣きどころの定番となった曲。今回も上手く挿入されてます。
◆姫子(ひめこ) CV:柳瀬なつみ (30%)
明るくカラっとした性格のお姉さん。23才。
◆セツミ CV:綾川りの (30%)
クールなメインヒロイン。15才。
◆千尋(ちひろ) CV:後藤邑子 (30%)
姫子の妹で大学生。21才。誰にでも優しく健気なタイプ。
◆優花(ゆか) CV:岩居由希子 (20%)
ちょっと素直じゃない23才。姫子とは古くからの親友。
良い話で何か考えさせられる内容でした。ボリュームの少なさを差し引いても読了後の満足度は高いです。前作で曖昧だった事柄が、過去のエピソードを見せることによってきっちりと説明されています。また、淡々と進行する前作と比べて想像力で補完することが減ったので、より分かりやすい内容になっています。
本作では終始、読者が傍観者となり、悲しく暗い物語を読まされるのですが、感情に訴えかける要素に溢れているので、前作以上に涙腺を刺激されて余韻が残りました。作者が、あとがきで本質はナルキ1だと言われていましたが、心に響くのはこのナルキ2の方だと思います。