ねこねこソフトの代表作で真っ先に思い浮かぶのは、強力な萌えゲーである「みずいろ」でしょう。このブランドの特徴としてキャラ立ちの良さがあります。ポンコツさんや雪希さんを筆頭に、長い間記憶に残るキャラが多かったですね。さて、このスカーレットは、銀色や朱-Aka-のようなシリアス路線です。プレイ時間の捕捉をすると、本編が13時間、おまけが4時間ぐらい。男性ボイスパッチを当てて、じっくりボイスを堪能しながら読破しました。
普通の学生だった主人公の明人。何となく過ぎる毎日に、何かを変えたいと学校を中退し目的もなく旅に出る。 そして、沖縄を旅行中に偶然知り合った謎の少女しずか。その出会いをキッカケに、今まで憧れに過ぎなかった非日常の世界へと、明人は足を踏み入れる…。
主人公は九郎と明人。この二人の視点を交互に切り替えながら話が展開されます。平凡な日常に何か物足りなさを感じ、非日常の世界に憧れる明人。彼は、しずかとの運命的な出会いによって、高級諜報家である九郎の下で働くことになり、未知の世界にどっぷり嵌っていきます。
主人公は二人ですが、派手な活躍をする九郎の方が断然かっこいいですね。生まれながらにして獲得した強権を盾に常勝街道を突っ走る設定は、現実離れしてかなり強引な気もしますが、あまり深く考えずにこの世界に順応した方がより楽しめるかと。
話はかなり中毒性ありますね。派手な銃撃戦等の燃え要素は薄いですが、周到な策略によって罠に嵌める諜報戦がメインなので、先が気になって一気に読破しました。映画のようなスピーディな展開もストレスを感じずに引き込まれた要因でしょう。
ただ、ちと残念な点もあります。それは、中盤から後半にかけて挿入されている、回想を使った話の引き伸ばしです。あれはサクサク感が弱まってちょい中だるみ気味でした。
そして、クライマックスも少々消化不良かな。いや、確かに面白いんだけど綺麗にまとめすぎた感じで、いまいち盛り上がらずに終わった感じ。最後はもう一捻りして、心に深く余韻を残す感動イベントが欲しかったな。戦闘シーンの演出も淡白で、ハードボイルドに必要な燃えが貧弱だったのも勿体無いです。
オーソドックスなADV形式で、一応、選択肢はありますが、基本的に物語をじっくり楽しむことを重視した、章立てで進行する一本道のノベルです。最近のエロゲーで常備されているシーン鑑賞機能が省略されていますが、DVDビデオのようにチャプター機能があるので特に問題は無いでしょう。読み返したいシーンの冒頭から再プレイ可能です。
バックログはホイール対応で音声の再生可。ディスクレス起動不可。スキップは未使用。ちなみに本作には用語辞典機能があります。マニアなら寄り道して摘み食いするのも美味かも知れませんが、サクサク進行を堪能したい私は試しに二回使っただけ。(苦笑) あらすじ機能も不要だったな。つーか、表示されたら惰性で読んでしまうし…。
鑑賞モードによると差分を含まず84枚。その内エロCGは16枚。今までのように圧倒的なクオリティではないけど、全く問題の無い出来。まぁ、萌え絵ではないけど、きっちり描き分けされてたのは好印象。シリアスな雰囲気を醸し出す為に背景も渋めの仕上がり。手描きの温もりというか変にCGっぽくなくてイイ感じ。
全28曲。その内ボーカル入りは2曲。いつも通り高レベルな仕上がりです。全体的にシリアスで渋めの曲が多いですね。又、ピアノ系のしんみりした曲がスパイスになって儚さを増幅させています。おまけで収録された声優さんのボイスコメントも良かったです。
──お気に入りの曲──
Escarlata 歌:木蓮
OPテーマ。全てスペイン語の曲。ラテン系っぽい雰囲気が異質な本作とマッチ。
loose 歌:KOTOKO
EDテーマ。しっとりバラード。I’veサウンドにしてはかなり渋めの味付け。
scarlett2006
名曲はいつまでも色あせない。珠玉のピアノアレンジ。
feeling of strain
しっとり爽やかな心地良さ。
remind
スローテンポで落ち着くギターサウンドで余韻が残る。
CG枚数は各ヒロイン2枚づつ。まぁ、本編だけなら極薄仕様で不完全燃焼ですが、相変わらず本編に無関係なオマケHが充実してるので多少は補給できます。初々しいシチュは良いのですが基本的にマッタリなので眠くなるかもw。破瓜の血や汁描写もそこそこ。オマケでは、ひよりんや進藤タン等、お馴染みのねこねこキャラが勢揃い。妙にほんわかして懐かしかった。鈴夏の巨乳で喉を潤した後は、バニーガール@ななみんの足コキでフィニッシュ(爆) 最後に…
ぽんこつサンは永遠に不滅です。(ぉ
明人のママさんが若すぎるのはエロゲのお約束?
◆別当・和泉しずか・スカーレット CV:籐野らん (60%)
九郎の妹でツンデレ少女。強気で照れ屋。通称:しずかデコ助。(笑)
妙に脳天気。意味不明なコントが始まる大佐妄想モード装備。
◆アメリア・ウィ−クス CV:夏野こおり (60%)
ポンコツ風味でコンピュータの達人。14歳にしては発育しすぎw。
◆葉山美月(はやまみつき) CV:まきいづみ (60%)
情報収集を得意とするが酒に滅法弱い。年齢は…ぎり・ギリセーフ!
ねこねこソフトの最後を締めくくる本作はシリアスで渋い内容でしたが、物語は十分面白く時間を忘れて楽しめたので良作と言えるでしょう。まったりした萌え要素を極力省き、物語に没頭させようという狙いが成功した逸品で、このブランドにしてはかなり冒険してますね。ちなみに同人ソフトと比較するのは無理があるかもしれませんが、余韻は最近プレイしたナルキッソス2の方が優れています。でも、面白さという点では本作に軍配が挙がるでしょう。
ただ、キャラのインパクトという点では少々見劣りするのは否めません。その理由は、どこにでもある何気ない日常を説明する為の学園シーンが少なく、殆どがハードボイルド風に演出された異質な非日常シーンで構成されているからです。平凡な日常と相反する死と隣り合わせの非日常。この二つの世界を対比して、日常の幸福を説くのが趣旨であれば、もう少し演出を工夫して欲しかったな。