よくある伝奇設定にSFが混じったような印象だが、各ヒロイン毎に、きっちり純愛ドラマが描かれている点は好感触。本作のタイトルにもなっている雪月の星霜の謎を、違和感無く溶け込ませて繋がりを持たせた構成が上手いね。主人公のかかえている苦悩や葛藤、あやふやだった秘密が、各ヒロインの物語を読破するうちに明らかになっていく感じ。感動系特有の綺麗な余韻と、スッキリした後味を残しているのがいいな。
強い想いの力が運命を変える奇跡を起こすとか、ご都合主義が入ってる感じだね。どこか、昔の泣きゲーを彷彿させるベタな展開だけど、意外に安心感を与えてくれる。でも、戦闘シーンがショボイのは残念。最近は、バトルものを中心にプレイしてたので、余計に迫力不足が目立つのかも。戦闘中の会話にも緊迫感が感じられないね。
選択肢で分岐するオーソドックスなADV。ツールはNScripter。動作は特に問題無し。バックログはホイール対応だが音声の再生はできない。Ctrlキーによる強制スキップは高速でサクサク進むが、既読スキップが無いのは残念。
イベントCGは差分を除いて100枚。本作のボリュームなら十分な枚数だね。イベント絵は綺麗なCGもそれなりにあるけど、背景はいかにも同人って感じ。全体的に淡い彩色で水墨画のような簡素なものが多いかな。気になったのは戦闘描写。臨場感を出す為にもっとCGを使って欲しかった。OPムービーは凝ってるね。特に雪の演出が綺麗。
キャラデザはあまり可愛くないね。少なくとも萌え系じゃないわ。太股はもう少し細い方がいい。キョウカのコスチュームはかっこよかったけどね。質は安定していない感じで全く印象が変わる絵もある。結構バラツキが目立つ。
全24曲。その内、ヴォーカル入りが3曲。どこかで聴いたような曲が多いけど、いかにも伝奇モノって感じの幻想的な曲がいいね。他にも温もりを感じさせる曲やしっとりしたピアノ曲が、落ち着いた雰囲気を醸し出して作品の世界観と上手くマッチしてるね。OPテーマの「粉雪の恋歌」は、神秘的な音色が雪景色に溶け込んで余韻を残すね。効果音は貧弱。男性陣では鏡丙のわざとらしく芝居がかった喋り方に違和感。ヒロイン達のボイスは問題なし。
個性的でキャラ立ちが良く、会話は楽しい。特にクールなキョウカは、いい味だしてたね。
◆沫城沙雪 (まつしろさゆき) CV:南可奈 <60%>
メインヒロイン。古風な感じの謎の少女。
◆琥塚瑠美 (こづかるみ) CV:mi-a <65%>
オカルトマニアの女子高生。明るい萌え声がいい感じ。見た目は巨乳っぽいがエロは無いw。
◆泉真実華 (いずみまみか) CV:杉咲ヒナ <60%>
ツリ目のツンデレ少女。見た目は中1。とても高1には見えない。
リーズナブルな価格でも十分楽しめた。シナリオ、CG、音楽、ボイス共にバランスが良い、同人とは思えない完成度だ。じっくり熟成させて丁寧に物語を紡いでいったことが分かる綺麗な仕上がり。さまざまなジャンルを取り込みながらも、余韻の残る後味爽やかな感動を演出した展開に、純愛ストーリーの原点を見た気がする。萌えを期待しなければ良作だと思う。
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