4年半に渡って連載された当シリーズも遂に最終話がリリースされました。全8話構成でコミケの度に一話づつ追加されて完結した本作は、いざ終焉を迎えると寂しいような気がして読者の一人として感慨深いものが残ります。おそらく続きモノでこれだけ長期間支持された作品は商業を含めても皆無でしょう。何しろ8話合計のプレイ時間が80時間を超える超大作ですから、一気にプレイすると高確率でダレると思います。今まで飽きなかったのは小出しにする焦らし戦略が効を奏したのでしょう。作者の思惑通りジワジワと嵌っていき脳内が麻痺しました。
ちなみに、これからこのシリーズを読破される方は、第1〜4話が収録された前編の『ひぐらしのなく頃に』と、第5〜8話が収録された後編の『ひぐらしのなく頃に解 目明し〜祭囃し編』の2本を購入すればOKです。2本合わせても3500円ですからコストパフォーマンスも抜群かと。尚、一話完結ではなく続きモノなので途中から読み始めても意味不明です。ご注意を。
アニメを中心としたメディアミックスが成功して脅威の知名度を得た当ブランドですが、今後は商業方面にシフトしていくと思われます。でも、その前に全8話を全て収録したDVD完全版が発売される可能性はあるでしょう。この流れは同人サークルで成功した「TYPE MOON」の例から容易に予想できます。これは型月商法と呼ばれる業界で既に確立された販売戦略ですね。
ここでは第8話「祭囃し編」の感想を書きます。その他の感想は以前に書きました。
>>ひぐらしのなく頃に 目明し編 罪滅し編 皆殺し編
惨劇なんてない。あったのは悲劇と喜劇。連続殺人ノベル「ひぐらしのなく頃に」の全てが解る。そして全てが終わる。究極の長編ノベルが遂に完結!
何だか真相が解明されていくに従ってオカルト的なホラー色が薄れていく気がします。伝説や戦時情勢等を語った堅苦しい説明文が多いのも気になりました。でも、舞台裏で進められていたカラクリを、詳細な説明を交えながら矛盾無く丁寧に紐解いていく過程は、中毒性があって面白かったです。運命を捻じ曲げて残酷な現実に逆らう強固な意志と、勝利する達成感みたいなものが心地良く伝わりました。
前作の皆殺し編と比べると戦闘の緊迫感や燃えは劣化したものの、皆の力で困難を乗り越えようとする趣旨に沿うなら、部活を全面に出したドタバタした最終決戦も有りかな。まぁ、綺麗に祭りになるハッピーエンドなら良しとしましょう。…って、また時間が凍るパターンかよ。(汗)
ツールはNScripter。画面全体にテキストが表示されるビジュアルノベル形式。フォントも大きく読みやすい。スキップは強制のみだが高速。バックログはホイール対応。キーボード対応。ディスクレス起動可。
基本的にノベルですから読み進めるだけです。今までと少し違うのは「カケラ紡ぎ」と言う、カケラ(小イベント)がサムネイル表示され、好きなカケラをクリックして読んでいくシステムになったことです。以前からあるTIPSみたいなものですね。ただ、読む順番がフラグ管理されているようで、別のカケラを読んだ後でないと読めなかったりすることがあります。と言ってもサムネイルに読める条件が書いてあったり、表示で教えてくれるので難しくはありません。まだ読めないのにクリックしてしまうとカケラが割れて警告されますが、条件を満たしてから再度クリックすると読めるので大丈夫です。ぶっちゃけ総当りで全部読んでいくだけです。
但し、52番目のカケラ(お子様ランチの旗)を出すには、一度エンディングを見た後にシナリオジャンプを使って「カケラ紡ぎ」から再開して、一度も割らずに51個のカケラを紡ぐことが条件です。一周目で順番をメモしておくかセーブ・ロードで切り抜けましょう。スキップを使っても作業プレイになるのは否めません。一度読んだテキストを再度読まされるのは苦痛ですね。まぁ、大した内容じゃないので無理して読まなくても良いかと。あと、スタッフルームの終わりで右クリックすると別のコメントが表示されます。
CGのショボさは相変わらず。イベントCGと呼ばれる一枚絵も数枚あったような気もするが、殆どが取り込み画像を暈かし加工したような簡素な背景CG。基本的に使い回しが多いが新規で追加されたCGも見受けられる。ただ、銃撃戦なのに銃器のイベントCGがなく背景CGだけで進行させるのは不自然。やっぱ、テキストと効果音だけだと臨場感がいまいちで限界があるね。これは赤坂の肉弾戦でも同様。立ち絵は羽入と赤坂が数枚追加されています。
鑑賞モードによると全72曲。使い回しも多いですが新曲も19曲追加されたのかな。良い感じですね。今シリーズ特有のピアノ中心の癒し系BGMが心地良いです。ヒップホップ系のBGMも面白い。今回初めてボーカル曲が追加されています。効果音もリアルで臨場感抜群。
──お気に入り曲──
「そらのむこう」 歌:結月そら…EDテーマ。明るく優しい曲。
「Thanks」…最後までこの曲に癒されたような気がする。
「Solitude」「Gray」…悲しい音色が耳に残る。
「assault_operations」…ハードロック風のスピード感が爽快。
結局、このシリーズのお気に入りは梨花ちゃま。
梨花「みぃー♪ボクのスク水で赤坂を虜にするのです。にぱー☆」
沙都子「赤坂は私の物ですわ。トラップの刑にしますわよ」
レナ「わぁ〜羽入ちゃんの垂れ角かぁいい〜お持ち帰り〜☆」
羽入「あぅあぅあぅあぅー」
今回は赤坂の鉄拳炸裂カッコイイ! つか、強すぎっしょ。
観音の潜在能力も恐るべし!
自称主人公である圭一は地味だったな…。
私ゃ、神のテキストを存分に堪能させて貰ったんよ。いや〜面白かった。神懸り的なシナリオと癒しサウンドの融合は極上のエンタメを創造してくれました。このシリーズが単なる小説として販売されてもこれほど売れなかったでしょう。そう、サウンドノベルだから嵌ったのです。奥の深いシナリオもさることながら、効果音とBGMのインパクトは絶大でした。ひぐらしの世界にどっぷり浸れたことは長い間記憶に残るでしょう。もはや万人が認める同人ゲームの最高峰ですから。
良作をリリースし続けることは非常に難しいことです。ですが、一度その旨味を覚えた読者は劣化を許容しません。それは、神のオーラで洗脳する竜騎士07氏といえど例外ではなく、相当なプレッシャーになるでしょう。でも、皆で協力すれば奇跡が起きることをリアルで実践された製作陣を信じて待ち続けます。是非とも「ひぐらしシリーズ」以上に楽しめる作品を誕生させて欲しいものです。
ただ、優れた作品のみが評価される下克上の昨今、ヲタ市場で商業デビューするには分業体制の構築と属性要素の埋め込みは必要不可欠です。CG等のビジュアル的な演出の弱さの克服と、フルボイス化を含む萌えや燃え等のマニア向け強化が最大の課題となるでしょう。でも、商業で天下を取るのは時間の問題かも。輝かしく成長した当ブランドの今後に期待大です。